「じゃあ、この部分を有明、読んで和訳してくれ」

…悔しい 悔しい 悔しい


「有明ー?」

ボキリッと長年愛用しているシャーペンの先から力を込めすぎたため、芯が弾ける

私の斜め前の凪原は、なにもなかったような顔でいつも通り授業を受けている


あれから3日経った

相変わらず、私の気持ちは凪原のあれ、に追いついていない

彼を動揺させて楽しむのは私の方だったのに

3日経った今でも、目を閉じれば西陽を背に、立っている凪原の姿が瞼の裏に浮かぶ

突然だった

急に引き寄せて



短く触れて

凪原は言った

「…不器用な奴。」

あの時のしてやったりの彼の声音が忘れられない。

…私の真似をしたんだ

凪原に今まで溜めてきた感情をぶつけるのに忙しくて、その前に彼にキスをして、弄んだことをすっかり忘れていた