「だけど、できなかったんだろ。」
私の言いたかった言葉を凪原が言う。
『…私は弱いから。
白にも黒にもなれない。
ずっと中途半端の弱虫のまま。
なにもできない。
ただ黙って自分を守ることしかできない。
でも、時々頭をよぎる。
いじめられてる子達の助けを求めてすがるような目、泣き声、そして今日の河口さんの涙。
それらが私を責めるの。どうして助けてくれないのかって
ずっとその視線に怯えて、でも菜々達の前では強がって平気なふりして
私が悪いのは分かってる
だけど…もう私疲れた…』
凪原はいつのまにかあんなに握っていた手首を離していた
今の私はここから出ようと思えば出ていける
でもそれをしなかった
多分、今、初めて他人に自分の本心を見せられてるから
さっき言ったのは嘘じゃない
私は凪原になら泣き顔を見せてもいいと思える
なぜか?
彼の前ではもう強がりを演じなくていいからかもしれない
もう散々、見抜かれて、見られて、今更隠す気にもなれない
そっと彼を振り返る
きっと私は今ひどい顔をしてる
泣いているせいでまぶたがひりひり痛む
西陽の逆光で彼の表情は見えない
