『凪原君に怪我がなくて…良かった』


そっと彼のシャツから顔を離し、すぐそこにある彼の切れ長の瞳を見つめながら目の端から一筋涙を流して、今まで菜々達にも見せたことのないような優しい笑顔を向けながらそう一言言った。



彼の澄んだ黒い瞳に、悪魔が笑っているのが映った気がした。


ドクっ と彼の鼓動が一瞬強く波打ったのを私は聞き逃さなかった。


冷血女が怪我をして、泣いたり笑ったりするなんてきっと凪原でも思いつきはしないだろう



頭は痺れて痛かったけどその代償に得たものは大きかった





凪原を動揺させたいのなら、
彼が予想だにしないことを私が起こせばいい そして、彼を翻弄すればきっと彼の中に隙が生まれる



そう私の中の悪魔が囁いた