…違う
こういうのじゃなくて、もっと決定的な何かを誰かが言っていた。
思い出せ、思い出せ
廊下に突っ立って、顔を片手で覆って眉を寄せている私は、きっと傍から見たら滑稽に映るに違いない 。
それでもこのときの会話にあった何かを思い出したい
私は隙のない凪原に隙を作りたいんだ
隙を作る… あっ…
ビリビリっと光が体を貫いた気がした
「今の菜々隙だらけだよー うちらの話もたまに上の空じゃん」
朝陽の少し不満を含んだ一言
『隙ができる?』
「そうよ 今の菜々が典型的にそれね
恋愛するとそのことで頭が一杯になって隙ができちゃうの だから普段の生活に支障がでちゃうし、恋愛ってそう思うと厄介ね
まあそれが醍醐味でもあるんだけど」
美帆の大人っぽい笑顔
菜々の赤い顔
朝陽がクッキーを噛み砕く音
