『報われないと分かっていても、凪原君にどんどん惹かれていく自分を止められなかった
他の女の子達のように、いつか私もこの想いを凪原君に受け取ってもらえないことに傷つくのが怖かった』
私をおぶっている凪原がはっと息を呑むが分かった。
私が凪原の見せる一瞬一瞬の表情や仕草に嬉しいという感情を抱いたのは、
その全てがちゃんと本物だったからなんだと
他人の嘘や悪意になんの期待も抱いていなかった私に、いつも本物をくれる凪原君のことを、
『私はもうずっと前から…凪原君を信じていたよ』
だから、想いを伝えて君に傷つけられることもきっと怖くないと思えた。
反対に、自分の不器用さで君を傷つけることも、心から信頼できる君にならば許されるような気がした。
『凪原君をこれからも信じていたい。
そうしても、いい?』
凪原に背負われたまま、アスファルトに映る2人の影をじっと見つめてそう尋ねた。
凪原は歩みを止めて、首だけ振り返ると、あの黒い澄んだ瞳で真っすぐに私の瞳を見つめた。
そして、少し切なさを帯びた光をその瞳に宿しながら、私を慈しむように優しく微笑んで見せた。
それは、今まで凪原が見せたどんな表情よりも、綺麗だった。
その瞳が、その微笑みが、はっきりと、俺を信じて、と言った気がした。
彼に対する隠し事も、ごちゃごちゃした感情も全て形にして、この声にのせて凪原の胸に届けることができたんだ。
夜空を見つめるうちに、ひと際明るく輝く星々を、小学生の頃に習ったかすかな記憶を頼りに見つけ出した。
らそのうちの三つの星を人差し指でつなぐと、私達二人の頭上に大きな夏の大三角形が浮かび上がる。
空に弾けて散った花火のように、美しくも頼りないいくつもの想いの破片をかき集め、それらが消えてしまわぬようにと不器用で下手くそながらも紡ぎだした言葉を繋ぎ合わせ、ようやく一つの形あるなにかとして完成させたように。
そのなにかは、きっとまだ完璧ではないし、ときにまた壊れてばらばらになってしまうこともあるだろう。
その度に、性懲りもなく私はそのかけらを拾い集めて、新たな言葉とともに凪原に届けるんだ。
それがどんなに稚拙で醜い形だったとしても、凪原はきっと受け入れてくれる。
私は、彼を信じている。
なんだかこの広い星空の下に、自分達2人しかいないような気分になった。
それでも、君がいるなら
ちっとも、怖いとは思わない。
彼が歩く度に伝わってくる背中への振動が心地よくて、全てを話し終えて安堵した私は、気づけばうっとりと眠りの世界へ落ちていった。
