凪原が何をしたいのかよく分からなくて、困っていると凪原が小さくため息をつきながら私の足元を指差した。




促されるままに視線をやると、



履き慣れない下駄に、朱色の鼻緒部分の皮膚が擦れて、血が滲んでいた。



本当によく周りに気を配れる人だと、その完璧具合に恐れ入る。



自分でさえ、足に痛みは感じていたがここまでの状態になっているとは気づきもしなかった。



それで、凪原の考えが理解できたけどさすがに高校生にもなってそれは恥ずかしくてふるふると首をふった。



紅色の花かんざしがまた、シャラシャラと揺れる。



困ったように、まるで小さな妹を見るような目で凪原が私を黙ったまま見つめた。沈黙が走る。



しばらくすると、その眼差しから彼が一歩も譲る気のないことを読み取り、ついに観念して、そっと下駄から足を抜いて石畳の上に素足で立つ。


石のひんやりとした感触が足先に伝わってくる。


そして脱いだ下駄を浴衣が汚れないように重ね合わせてから胸に抱え、山吹色の帯の間に猫を挟み込むと、遠慮がちに凪原の背中に体重を預けた。





私が背中にしっかり寄りかかったことを確認すると、そっと腕を後ろに回し、私を驚かせないようにゆっくりと立ち上がって歩き出した。







灯籠にぼんやりと浮かび上がった参道は、相変わらず幻想的で、どこかで私達の姿を神様が見ているような気がした。