石畳の参道の端に、一定間隔でほんのり灯籠が灯っていて闇の中、その道だけを明るく浮かび上がらせているのが幻想的だった。
花火が終わったせいか、神社の人混みもだんだん少なくなり、今この参道には私達2人だけしかいなかった。
カランコロンっと石畳に下駄のぶつかる音が心地よくて、凪原の一歩先を歩く。
「…ねぇ、怒ってるでしょ」
後ろから凪原の声が私に向かって投げられる
『…別に、怒ってない』
下駄の音に意識を向けながら、凪原の方を振り返らずに歩き続ける。
そんな私の手の中には、太っちょの猫がいた
そんなに似てるのか、とまじまじとそいつを見つめる。
不機嫌そうにこちらを見るビーズの瞳
ツンツンと伸びた短いひげ
黒い毛並みに、ぶにゃあんと太ったその図体
指に引っ掛けて、揺らすと一層不機嫌そうなそのマスコットと目があう。
そんな私を見て、くすくすと凪原の乾いた笑い声が聞こえてきて、むっとした。
そんな彼にむっとして歩く足を一層速めると、石畳の上に転がり込んだ小石に下駄がカツンっと引っかかり前に倒れ込みそうになる。
次に襲ってくる痛みをこらえるためにぎゅっと目をつむると、寸でのところで後ろから腕を引かれ凪原の胸に受け止められた。
沈黙が走る。
近くの雑木林から、かすかに虫達の鳴き声が聞こえてくる。
空に浮かぶ雲の隙間から、月の優しくて少し頼りない光が私達を照らし出す。
後ろから包み込まれるようなこの体勢に耐え切れず、つかまれた腕をすり抜けて歩き出そうとすると、それをさせまいとぎゅっと後ろから抱きしめられる。
「…有明に似てるって言ったのは、そういうことじゃなくて、まとってる雰囲気が似てるって言いたかったんだ」
身長差でちょうど凪原の吐息が耳に当たるので、くすぐったくて、心臓がうるさい。
「棚に並んでるとき、そいつ、他のやつと違ってなんだか寂しそうに見えたから。
誰も近寄らせない雰囲気なのに、すごく寂しげ」
射的を構えて、片目を閉じてあの猫に狙いを定める凪原の姿を思い出した。
