凪原は、ディスプレイを見ると、大きくため息をつき、出るか出ないか迷ったように携帯を見つめていた。
そうして、しばらくして諦めたように通話ボタンをタップして電話をとった。
「…もしも「おぉお! 俺、俺! お前、ちゃんと有明に会えたのかよ! てか、キスの1つでもしたんだろうなぁ? どうなんだよ、もったいぶらずに教えろよぉ!!」
中川の声が漏れて聞こえてきて、恥ずかしさで頬が一気に熱くなる。そんな私を一瞥して、変わらずぽんぽんっと頭を撫でてくれながら、凪原が答える。
「…騒がしい。 俺に構うくらいなら、宮下と仲良くしろ」
え?私がなんだって!?
甲高い菜々の声が、中川の脇から聞こえてきて思わず笑ってしまう。
「っんだよ! お前恥ずかしいこと言うじゃねぇよ。てか、今、笑い声聞こえたけどお前ちゃんと、有明に会えたんだな。
…良かったな」
「…奏人、
さっきはごめん…。
それと、 ありがとう」
「ま、いいってことよ! で、で、で?有明とどこまでいったんだよ?なぁ、おい聞いて」
ブチッと聞き終える前に、凪原が真顔で通話終了ボタンを押したため、静かになった。
「…行こうか」
私の方を見て、ふわっと凪原が微笑みながら手を伸ばしてきた。
ためらいがちに凪原の指の長い綺麗な手に触れると、ぎゅっと握られ、優しく手を引かれながら神社の境内を後にした。