凪原の制服の袖をぎゅっと握って、彼の瞳を真っすぐ見つめて言った。
『…私は、凪原君を傷つけたい。
そして、それと同じくらい…
凪原君に傷つけられたい。』
凪原の澄んだ瞳が、大きく開かれ一瞬揺れたかと思うと、
今度は真っすぐ私を射抜くように強い光を放ち、瞬間、薄明かりに照らされた石段の二つの影が一つに溶け合った。
凪原のさらりとした前髪が額にあたってくすぐったかった。
凪原の優しい匂いが鼻をかすめる。
そして視線と視線がぶつかり合ったかと思うと
どちらともなくそっと目を閉じた。
ふれた唇と唇。
その瞬間、大きな音とともに空に大輪の花が咲いた。