「…それが人を好きになるってことなんだよ
…お姉ちゃん。」
お姉ちゃん、と言ったときの悠はなぜだか少し悲しげに見えた。
それは、悠が私をあえて突き放したんだとそう感覚的に悟った。
アイスティーをかき混ぜながら、悠は続けた
「お姉ちゃんは、なにもかも完璧に1人でやり遂げようとするけど、でも恋愛っていうのは1人じゃできないことだよ。
お姉ちゃんは、先輩との関係を1人で完結させてしまうの?
先輩が自分の醜い一面でさえも全て受け入れてくれる人だって考えたことはないの?」
凪原先輩を信じようと、
そうは思えない?
悠の一言にはっとした。
カーストの中で、もがき苦しむうちに私はこんなにも根本的なことを見失ってしまっていたなんて。
今で、凪原と過ごしてきた日々が私の記憶を掻き立てる。
いつもの無表情な顔。
驚いた顔。
悲しげな顔。
いたずらに微笑む顔。
心配で不安そうな顔。
…そして、心から楽しんでいるときの綺麗な笑顔。
そのどれもが、ちゃんと本物だった。
凪原が私に見せていたのは、仮面とか素顔とかそういうのは関係なくて、全部ちゃんと本物だったんだ。
偽物か本物か、疑い深く様子を伺っていた私に、凪原はいつも本物をくれていた。
そして、そんな真っすぐな凪原のことを私はちゃんと信用していたんだ。
裏切られるのが、見限られるのが怖いなんて言って、それでも私が1番の心の拠り所にしていたのは凪原だった。
他人を信じるのは諦めていたはずなのに、
私は、凪原を信じたいと思っていた。
そして、もうすでに初めからずっと信じていたんだ。
ずっと気づかないふりをしていたのは、凪原のことが大切で、凪原を信じ続けたいという私の本心だったんだ。
