悪魔失格 – スクールカースト –


「…咲希、あのさ。」

グラスの回りに付着した水滴をペーパーでふきとりながら、遠慮がちに悠がこちらを見つめる。


『…なに?』

パフェをすくい上げながら、悠の瞳を見つめる。悠も私の瞳を見つめていた。


「…咲希はさ、

凪原先輩のこと、 どう思ってるの?」


カランっと悠のアイスティーの氷が転がる音が響いた。


夏なのに、今日は爽やかな風が吹きぬけて、このカフェテラスでお茶をしているととても心地よく感じる。

カフェテラスのいたるところに、様々な模様の風鈴がチリンチリンっと涼しい音で鳴いている。


悠の言いたいことは、なんとなく分かっていたから別段、そんな質問を受けても動揺することはなかった。




『… 惹かれてる…と、思う。』

チリリンっとひと際澄んだ高い音で、風鈴の1つが鳴った。




風に揺れる風鈴の群れを一瞥したまま、言葉を続ける。

『…でも、全て分かりきったことなの。

この気持ちは決して彼には受け入れてもらえないし、

私の中に潜む醜い感情でいつかきっと彼を傷つけてしまうということも。


…だから、私は、この気持ちが報われるなんて、そんな夢みたいなこと願ったりしないって決めたの。』


深刻な雰囲気が嫌で、パフェを食べるのに夢中なふりをした。


そんな様子の私を、さてどうしたものかとでも言いたげに悠が見つめていた。




「強がりはやめなよ、咲希。」

先ほど半泣きで騒いでいたとは思えないほど落ち着いた声で私を諭すように悠が言った。

こういうときはいつも、悠の方が私よりも年上のような錯覚に陥る。


無邪気で幼さの残る彼が見せる、こういう大人びた一面には毎回驚かされる。



「咲希だって、自分が本当はどうしたいかなんて、もう分かってるんでしょ。

いつまでそうやって自分の気持ちに蓋をして気づかないふりを続けるの?」


悠のビー玉みたいに澄んだ瞳は、私の本心をもうすっかり見抜いてしまっているようだ。


昔から、この目を見ると言い訳や嘘は通じない気がして結局は全て話すことになってしまっていたっけ。

彼はそういう特殊な力を持っているのかもしれない。


気づけばパフェをすくっていたスプーンを脇に置いて、恐る恐る悠を見つめながら本音を漏らしていた。