「ごめんって!咲希、怒らないで!ね、この通り」
顔の前に手を合わせて、可愛らしく謝るその相手に、
私は思いっきりゲンコツを喰らわした。
『…こんなこと私頼んでないんだけど。
どういうつもり…。』
静かに言ったつもりなのに、ただならぬ私達の雰囲気にカフェテラスの客や店員がこちらを、なにごとかと伺っている。
その視線がうっとおしくて、謝罪のつもりか目の前で頭を机にこすりつけているそいつの制服の襟元を掴んで引きずり起こした。
その私の行動に、カフェテラスの空気は、夏にも関わらず、一気に凍りつく。
「…だってぇぇ! 咲希が僕になんにも話してくれないからじゃん!いつも冷静な咲希があんな風に泣いてたら、心配になるに決まってるでしょぉお!」
半泣きながらも負けじと言い返してくるそいつのビー玉のように澄んだ瞳を見ていたら、そんなにも心配させてしまったのかと少し申し訳なくなった。
襟元からそっと手を離してポケットから、ハンカチを取り出し、そいつに差し出すと、遠慮もなしに即刻受け取って涙を拭き始める。
『…ごめん。そんなに心配させてたなんて思いもしなくて…。』
そう言いながら、ヤツの泣き顔がぱぁっと明るくなり全て許されたと勘違いする前に、
『…でも、それとこれとは、
全くもって話が別。』
そして、強く相手を睨みつけた。
