「凪原先輩、
先輩があいつに何をしたか僕は知りませんが、
これ以上、咲希を泣かせないでください。」
その場の雰囲気が一気に凍りつく。
人懐っこい笑顔を浮かべた優しげな少年の口から出た言葉は、その見た目とは対照的なきついものだった。
「…咲希…って、有明のことだよな?
こいつお前の知り合いなのか、司?」
奏人が驚きと疑問を顔に浮かべながら俺に尋ねる。でも、そんな奏人を一蹴することはできなかった。
なぜなら、今この中で1番驚いているのは俺だったから。
有明の名を軽々と呼び捨てにしてしまうこいつは、彼女の一体なんなのだろう。心臓が一気にぎゅっと苦しくなる。
でもそれは、有明を前にしたときの苦しさとは違う、もっとどろどろしてドス黒い感情だった。
