「それでは、明日から夏休みですが、」
担任の一言に、っしゃー!!!と教室中が歓喜の声に包まれ、口々に騒がしくなる。
終業式を迎え、成績表の返却の終わった今、生徒達はすっかり浮かれた調子で教室のいたるところで来たる夏休みの予定を立てる声が聞こえてくる。
「夏休みですが!が!がぁぁあ!」
そんな雰囲気を制すかのように担任が廊下にまで聞こえるのではないかというほど大きな声で叫ぶ。
「なんだよ、山ちゃん。そんなデカイ声出してよーぉ」
サッカー部の監督兼担任の山下先生に対して、気心の知れた中川が声をかける。
「いい質問だ。中川。 たまにはお前でもまともな質問をするじゃないか。」
「うるせーよ!たまにはってなんだよ!いつも、の間違いだろ? なぁ?みんな」
お調子者の中川がとぼけたようにそう言うと、教室が爆笑の渦に包まれる。
『…馬鹿みたい』
もうずっと空席の続いている河口さんの席をぼんやり見つめながらぼそっと呟いた。