…どうか許して。
そう言って弱々しく微笑んだ有明は、今にも消えてしまいそうなほど儚げで綺麗だった。
先生の採点ミスで、有明と自分が同率1位であったことを伝えたくてずっと彼女を探し回っていた。
廊下に貼り出された順位表の前から、少し落ち込んだように去っていく彼女の背中を遠くに見つけたとき、早くそれを伝えたくて彼女を追いかけていた。
有明の足がいつもの理科室に向かっていると気付いたとき、なんだか少し嬉しかった。
自分にとって、あの場所はいつからか思い入れのある場所になっていたため、もしかしたら有明にとってもそうなのかもしれないと勝手に憶測を立てていた。
理科室のドアの埃で薄汚れたガラス越しに彼女が机に寝そべっているのが見え、そっと近づくと閉じられた瞳から幾筋かの滴が流れ落ちていた。
驚きと戸惑いで一瞬、体がビクッとして、いつか同じように有明が涙を流していたときのことが頭によぎった。
有明の涙は、水晶のようにとめどなく頬を伝い机に落ちていく。
なにが有明を苦しめているのだろう。俺は、彼女の苦しみを全て払いのけてやれていなかったのだろうか。
有明がなにに苦しんでいるのかせめて表情からでも読み取れないかと、少し伸びた細い髪をそっとかき分ける。
堅く閉じられた瞳は何も教えてはくれない。
自分の力のなさに心底腹が立った。
隠れて泣いている有明の美しい涙が、自分の無力さをはっきりと物語っているような気がしていたたまれない気持ちになった。
有明が目を覚ましたら、全てを聞こうと決めた。まだ自分にできることはなにか残っているかもしれない。有明には笑っていてほしい
それが、俺の願いなのかもしれない。
