悪魔失格 – スクールカースト –


「…お願いっ!!お願いっ!!この通り!おねがーーい!!」



今思えばデシャヴのような気もするが朝陽と中川と三宅が必死な形相で私と凪原にすがりつく。



ここ何週間かですっかり習慣化し、いつも通りこの理科室へ来て、凪原と互いに分からないところを教え合っていた。

あの日以来、私達は面と向かってはあの話題には触れていない。

自分からあの話題を口にすれば、もう歯止めもきかずに、凪原達の世界に引きずり込まれてしまうことが分かっているから。

凪原も、変わらずいつも通りに私に接してくれる。

その時、ドンドンバタバタバタンッといつくかの足音が床を踏み抜くのではないかという程の勢いで誰かが近づいてきて思いっきりドアを開ける。



そして、このお願い攻撃に至る。

『え、、。 …なんなの?』



幽霊の大騒ぎでなく、朝陽を筆頭としたいつものメンバーとサッカー部連中だったことに安堵しながら、思わず掴んだ凪原の手をきまり悪く離しながら尋ねる。


「それがぁぁあ!!! 助けてぇええ」

朝陽の時系列のめちゃくちゃな話をなんとか頭で整理しながら、そこから小1時間説明を聞く。



「…要するに、赤点とったら試合に出れないから、俺と有明に勉強教えて欲しいってことでしょ。」

呆れきった顔でふてぶてしくまとめる凪原。



「ちょっと、待って。 朝陽と中川と三宅はともかく、私と菜々はそこまでヤバくないわよ! …ただ苦手科目は赤点スレスレで補習の可能性があるから私達も教えてほしいって話!」


自分達はあくまで違うと強調したいのかはっきりと美帆が言い放つ。


「俺は、ただ暇つぶしになりそうだなーって思ってついて来ただけだよ 可愛い子と一緒に勉強したらはかどるかなってね」


桜井が媚びたような目で私を見る。



「…じゃあ、お前はこれを100題解いたら帰っていいから。」


そう言って、分厚い数学の問題集を凪原がドドンッと積み上げると桜井が青い顔をして一歩引く。



「…桜井以外も、これくらい覚悟してるよね。 試験まで寝る時間ないから。」




凪原の低い声が、理科室に静かに響き渡りその場の全員がかたまるのを感じた。


その日から2週間の猛勉強。
陰気なこの理科室も、これだけ騒がしい連中がいると不思議と明るく感じられる。

毎日、放課後に集まっては日が暮れるまでみんなでペンを動かした。



たまに響き渡る朝陽の絶望の叫び。



うたた寝をして凪原のデコピンをくらい、痛みもがく中川の叫び。



100題解ききれない悲痛な桜井の叫び。


叫んでばかりだったけど、とても楽しかった。



凪原のスパルタ具合は、みんなをヒーヒー言わせるほどだったけど、彼の教え方は効果てきめんでみるみるみんなの力を伸ばしていった。