有明の罪悪感を拭う。
それが俺が有明とした約束だった。
その約束を守るためにターゲットいじりが始まると、旧校舎の理科室で2人時間を過ごすようになった。
有明の笑顔が少し増えたような気もするが、まだ彼女は彼女でなにかと闘っているように見えた。
きっとまだ自分を責め続けている。
『なんでそんなことを?
私、凪原くんがあの日保健室でかけてくれた言葉だけで救われた。
でも、口約束で終えずに今も私を理科室へ連れ出してくれる凪原くんに本当に感謝してる』
約束を守ってくれて、ありがとう
そう言って小さく微笑んだ有明の笑顔は、綺麗だけどどこか儚くもろかった。
『…でも、最近思うようになった。
いつかは決めなければならないって。
完全な悪魔になるのか、
それとも、
今までよ自分を罰するために、次のターゲットになって、菜々達の餌食になるか』
有明の予想外の言葉に、息が止まりそうになった。
思わず、有明の肩を掴む。
一瞬、有明が河口のような無惨な姿で泣いている姿が脳裏に浮かんで恐怖に襲われた。
そんな俺を見て、諭すように穏やかな表情を浮かべる有明。
『 凪原くんの言う通り、カーストはなくならない。
私達が生まれるずっと前から存在してきたものを、私1人がなくせるなんてそんな夢みたいなこと、私は思い描いたりしない。
みんな平等で仲良くなんてありえない。
だけど…』
一呼吸おいて、有明が俺を見つめる。
その瞳は、まっすぐで強い。
『 カーストは変えられなくても、
それとどう自分が付き合うのかは私に選べる
私だけの自由。
…いつまでも偽善者ではいられないよ』
有明の意志の強いその瞳に、また胸が苦しくなる。
どうして、こんなにもまっすぐで
こんなにも綺麗で
こんなにも…
彼女は馬鹿なんだろう。
自分を犠牲にして、罰を受けるなんてどうしてそんな考えを抱いてしまうんだろう。
