『…凪原くん?』
はっとして顔をあげると
蛇口を挟んで向かい側に、有明が立っていた
どくんっと心臓が声をあげるのがはっきりと聞こえた。
『…あ、今は部活、休憩時間なんだね
邪魔してごめん、なんとなく声をかけたくなっただけ、
じゃあね』
ひらひらと小さく手を振りながら、あの黒髪をさりとなびかせたかと思うと校門の方へ歩き出そうとする。
「…待って」
なぜだが分からないけど、有明から話しかけてくれたことに喜んでいて、目の前から去ってしまうことが寂しいと感じてしまう自分がいた。
俺の声に足をぴくりと止め、不思議そうに有明がこちらを見つめる。
なんの目的もなく、引き止めてしまったため何を話していいか分からず戸惑ってしまう。
ジリジリと鋭く照り返す夕陽が、あの保健室でのことを思い出させる。
「…俺、お前との約束を果たせているのかな」
はっとしたように有明の目が揺れた。
