「有明ちゃん、タオル受け取ってたよ。
それで菜々ちゃん達にからかわれて、だから今日の昼休みは来なかったんだよ」
桜井の一言に今初めて訳が分かって納得したという顔を浮かべる奏人と三宅。
「それで、あの子のことだから律儀に洗って返してくれたんでしょ? 」
桜井が俺を見てにっこり微笑む。
むかつく奴だけど、こいつはこういうことの察しには優れている。
「…じゃあ、今日の練習で司の調子が良かったのも、そのタオルのおかげだったり?」
三宅がからかうように笑う。
ひゅーひゅーと他のサッカー部員までが冷やかしてきて心底面倒だと思い、水を飲みにその場を離れる。
逆さまにした蛇口の口から溢れ出る水を渇いた喉に流し込みながらまだ有明のことを考えていた。
家庭科室で女子達に見つかりそうになった時、抱き寄せた有明の華奢な体にどうして胸が苦しくなったのだろう。
自分が彼女に、単純な興味以上の何かを感じ始めていることに気づかないふりをしてきたが、今日の一件でまざまざと自分の思いを見せつけられたような気がして、今日1日はずっともやもやしていた。
まさかそんなはずない、と否定してみても逆にそれ以外の答えはありえない気がしてくる
俺は、有明に惹かれ始めている。
女子の話題で盛り上がる奏人達にくだらないと思いながらも、有明の話になると気づかぬうちに耳を立てていたのは、
カーストの中での振る舞いに葛藤している有明の力になりたい、
守りたいと思ったのは、
あの日、保健室で有明にキスをされたとき胸が壊れてしまうくらい苦しくなったのは、
仕返しのつもりでしたあのキスの本当の意味は、
「…好きなんだ…」
ひねりっぱなしの蛇口から溢れ続ける水音を前に、ふと言葉が漏れた。
