昼休みに追いかけてくる女子達をまくうちにたどり着いた家庭科室で、背を向けて慣れたように洗濯をしていた有明の姿が思い出された。
その姿を見るのは初めてではなかった。
以前にも一度、宮下達に泥水を引っ掛けられて泣いている河口のシャツを懸命に洗っているところを見たことがあった。
「有明さん…!
も、もういいから…、私なんかを助けてるとこ見られたら今度は有明さんが…!
な、なんで…? どうして、私に優しくしてくれるの?」
身を震わせながら有明を見る河口に彼女が言った。
『…優しくなんかない。
私がしていることはむしろ、誰よりも最低なことだから。
私は、あなたのためにやってるんじゃなくて
自分の罪悪感を拭うために、
自分のためにやってるに過ぎないから。』
だから、私はあなたを救えない、
あなたをこれからも傷つけることになる
私に期待しないで、きっと答えられないから
私を恨んで欲しい、そう言ったときの彼女の瞳は暗かった。
「違うよー、馬鹿だなぁ奏人は」
女子に愛想を振りまいていた桜井がこっちを向いて口を挟んでくる。
