悪魔失格 – スクールカースト –

あれは、確信犯なのか、無意識なのか。
どちらにしたって間に受けるべきではないと分かっている。


なんたって相手が悪すぎる。彼に想いを寄せた女子達が今のところ全員全敗していることは有名な話ではないか。一つ上の美人で完璧な先輩でさえ、容赦なく振られてしまったと、この間菜々が言っていた気がする。


1度落ちてしまえば、あとはもう泥沼のように沈んで、沈んで。その先を想像すると、きゅっと心臓が冷えるような気がしたけど、相変わらず興味は絶えなかった。怖いもの見たさってこういうことをいうのだと思い、我ながら厄介だなと顔をしかめた。


洗いあげた後、例のタオルを乾燥機に入れて回す。

乾燥機のメーター表示をぼうっと見つめていると、廊下の方に気配を感じて視線を移す。



澄んだ黒い瞳が廊下に面した窓ガラス一枚を挟んで私の瞳にぶつかる。

…凪原君?



思わず声に出しそうになったけど、窓越しに少し慌てたように彼がしっと自分の唇に人差し指をあてたので、言葉を飲み込みながら使い終わったタライを元の場所に戻す。


彼は、ガラリッと少し傷んだ木製の引き戸を開けて、家庭科室に入ってくるとなんの説明もないまま、急いだ風に私の腕を引いて前の教卓の下に隠れるように視線を促す。


ただならぬ雰囲気を感じて、大人しく彼に従った方がいいと判断し、教卓の下にしゃがみこむとすぐ隣に彼も滑り込むように片膝をついて座る。



声を出してはいけないようなので、彼の瞳からなにか読み取れないかと見つめてみたけれど、彼はいつもの無表情を少しだけ困ったように歪めただけだったので何が起こっているのかは分からなかった。