…結局私は、あの調子のままいつもの起床時間までゲームをしていた。
長時間画面を見続けていたせいで目が痛い。
学校から特に連絡は来ていないから、通常通り学校はあるんだろう。やっぱり事件性は大袈裟だったんだよ。
のろのろとダイニングに行くと、机の上には昨日の夕飯の残りと思われるものが用意されていた。
キッチンからお母さんの声が聞こえる。
「あら。あんたが自分から起きてくるなんて珍しいわね」
明け方に目が覚めてずっとゲームしてたから、とは勿論言わない。
「まあたまには、ね」
私は椅子に腰掛け、皿に被せられていたラップを剥いだ。
「あっためなくていいの?」
そう言ったお母さんの手には、毎朝健康のためと言って飲んでいるトマトジュースが入ったコップが握られていた。
その赤が、昨日の事件を思い出させる。
その途端に、食欲が失せた。
先程剥ぎ取ったラップをかけ直し、立ち上がった。
「やっぱお腹空いてないからいらない」
「えっ?でも恋桃、昨日の夜も食べてないじゃない。お腹空くわよ」
いいの、と振り切り、私は身支度をして家を出た。
ちょっと早いかなって思ったけど、まあいいや。
今日は何も無いといいな。