「無理だ。親父の息子だからな」

「ふっ、何を馬鹿なことを」


一瞬だけ俺を見て、親父はすぐに書類に目線を戻す。


「俺が馬鹿なのは元からだ。わかってんだろ」

「それはそうだな」

「──」 


親父が見ていた書類の上にドンッと手をついた。さすがに親父も表情を険しくする。


「戻ってきてやってもいいが、一つ条件がある」

「…条件だと?お前にそんなことを持ち出す資格などない」

「結婚したい女がいる」

「──」

「もしその女とうまくいったら、挨拶も結納もちゃんとやってくれ。何が何でも祝福してほしい」

「…うまくいくかもわからんのにか」

「失敗したら親父達のせいだからな。そいつの為なら真面目に働ける。社長にでもなんでもなってやるよ」

「それはうまくいってもらわないと困るな」

「だから協力してくれ。麻友ちゃんは?」

「会議中だ。直に戻って─」

「─龍成?!」


──最高のタイミングだ。