──念願の就職。

それがどうしようもなく嬉しくて、わたしは少し浮かれていたのかもしれない。


「わっ……!」


うそっ…!!


「華乃ちゃん?!大丈夫?!?!」

「──っ、はい…っ」


痛い、焼けそう……!


「もしかしてこの熱湯?!」

「…はい…」


馬鹿…。


熱湯の入った鍋をひっくり返して、思いきり右手にかけてしまった。


「冷水に浸してて!今氷持ってくるから!」

「すみません、店長…」


本当に馬鹿だわたし。何やってんの。せっかく社員になれそうなのに迷惑かけて、こんなんじゃさっきの話なかったことにされても文句言えない…。


「そんな暗い顔しなくても大丈夫だって。まだお客さん少ないし、これから健太も優斗も来るから」

「申し訳ないです」


泣くな。いい大人がこんなことで泣くんじゃない!


「だーいじょーぶ!それより病院行ったら?これじゃ仕事は無理そうだし、右手全体でしょ?」

「いえ、平気です。ひどいのは指だけだし冷やすだけで充分です。でもいても何もできないんじゃ迷惑ですよね…」