離婚前提策略婚。【改訂版】

大きく頭を下げて走り去ろうとする真奈美ちゃんの手を、俺は何の躊躇いもなく掴んだ。

こんなシチュエーション、何度も経験済みだから。


「別に気持ち悪いとか迷惑だなんて思ってないって。俺、そんな酷い男に見える?」

「そ、そういうわけじゃ…」

「それなら気にすることないだろ。俺は真奈美ちゃんと話したいから話してるんだよ。イヤなら元からシカトしてる」

「…は、離してください…」

「あ、ごめん」


会社の前だということを忘れていた。

手を離すと、真奈美ちゃんは俺に背を向けたまま小さく言った。


「……謝らなきゃいけないのはわたしの方です」

「…え?─ちょっ、真奈美ちゃん?」


急に腕を引かれ、会社の入り口の横側にあるデッドスペースに連れられる。

ここなら確実に人目につかない。

見た目に合わずかなり怪力だな、真奈美ちゃん。


結構な近距離で向かい合う。俺の両腕を掴んだまま、真奈美ちゃんは俯きながら言葉を吐き出した。


「ごめんなさい!一社員のわたしが言える立場じゃないのは重々承知なんですが、止められなくて…!わたし、本気で龍成さんのことが好きです!」