離婚前提策略婚。【改訂版】

「っっ!!」


数十メートルほど上がっていたエレベーターから見える景色は、暗くても充分恐怖を感じる光景だった。

足がすくみ、思わずあいつの服をぎゅっと握りしめてしまう。


「…まじかよ」


呆れられてもしょうがない。だって、怖いものは怖いんだもの!


「はい華乃ちゃん、着きましたよ。今ドアを開けてあげるからね」


エレベーターを降り部屋の前まで来ても、わたしはあいつの服を握りしめたままだった。

あいつのふざけた言葉遣いも、わたしの耳には入らない。


「ほら、ここまで来れば大丈夫だろ」


玄関に入りドアが閉まると、段々と感覚が戻ってきて精神的に安定していく。


「やっぱり俺は頼りになる旦那様だろ?華乃ちゃん」

「──は?!どこが…」


そこでようやく気づく。あいつの服がしわくちゃになるほど強く握りしめていたことに。


「わっ…」


ぱっと手を離す。あいつの顔は得意気。恥ずかしいような悔しいような、なんとも言えない状態。


「俺が一緒じゃないとだめだな」

「なっ…!そんなこと全然ない!」