消したい過去…


そう言われて、私は真っ先に、ある過去を思い出した。


「本当に、消せるんですか…?」


老婆は優しく、でもしっかりとこう告げた。


「ええ、もちろん。…でもね、この過去消しゴムには大きな副作用があるのよ。」


「副作用…ですか。」


「そう。過去をほんのちょっと、一消しでもするとね、未来が大幅に変わってしまう場合があるの。それでも…」


「それでも構いません。それ、買います!」


老婆の言葉を待たずに、私は結論を出した。


老婆は、一瞬驚いた様に目を見開いた。


「あなたの覚悟は本物の様ね。いいでしょう、これはあなたに差し上げます。」


「えっ、お金は…」


そう訪ねると、老婆はゆっくり首を横に振り


「これは、もうあなたのものですよ。覚悟を決めたときから…ね?」


私は、過去消しゴムを受け取り、しっかりと握り締めた。