佐倉小花の幽愛白書


 時間は流れて昼休み。


前日に家事が出来る事をアピールしていた事から彼女が理科準備室まで手作り弁当を持ってくるのではと危惧していた私は昼休み開始を告げるチャイムが鳴ると同時に購買へ出向く為にドアを開けた。


4限目に授業が無くて良かった。おかげで器具の片付けなどに時間を掛けることなくスムーズに買い物に行ける。


それにしても自分を慕う女生徒が甲斐甲斐しく手作り弁当を持ってくるのではなどと考えるのは些か自意識過剰かとも思ったがどうやらそんな事は無いようだ。


なぜならドアを開けるとそこにはいつもの無表情で手作り弁当を携えた佐倉小花が立っていたからである。


「ひっ!?」


 これには流石の私も悲鳴を上げざるを得なかった。


「先生。お弁当を作ってきたので食べて下さい」


「待て、どう考えても早すぎる! もしかしなくても君は4限目が終わる前から待ち伏せていたな!?」


「如何にも。先生に早く食べて欲しくて4限目の終了5分前に腹痛を現国の山下先生に訴えて抜け出してきましたが」


 全く悪びれている様子の無い佐倉に一教師としてもちろん説教はしたが、終始無表情なままの彼女が反省しているかどうかは解らなかった。