難あり編集者と極上に甘い結末


 岩崎さんが会場を後にし、何故か更に緊張感が増した私は、ひとまず一番近くにあるテーブルからリンゴジュースの入ったグラスを手にした。

 一口飲み、辺りを見渡す。どんどん人数が増え、変わっていく会場の景色を一歩引いて客観的に見ている私。すると、そんな私の右肩に突然誰かの手が置かれた。


「沼川先生。お久しぶりです」

「あ、平田さん。お久しぶりです」

 肩に置かれた手から顔まで辿る。私に声をかけたのは、以前、スターズ出版に足を運んだ時に話しかけてくれたことのある平田さんだった。明るい茶色の髪が特徴的で、目鼻立ちはしっかりとしている。まだしっかり話をしたことはないけれど、人懐っこい、気さくな人だ。

「今日、沼川先生も参加されてたんですね。ってことは、もしかして、岩崎も来てます?」

「あ、はい。今、電話で外に出てますけど」

「そうなんですね。あ、沼川先生、しってました? 実は今日、春川櫻子先生も参加されるんですよ」

「え、本当ですか⁉︎」

 平田さんの口から出た名前に、私は目を丸くして驚いた。前に平田さんと話をした時、私は春川櫻子先生の作品を好んで読むと話したことがある。春川先生は、私とは比ではないほど多くのジャンルを手がけ、新刊を出せば必ず書店に平積みされる程の人気の作家さんだ。