書きたいシーンやストーリーが次々に浮かび、メモを取る。それをしばらく繰り返していると、控え室のドアが二回ノックされた。
「何か楽しそう」
いいアイデアでも浮かんだの? と、開いた扉から顔を覗かせたのは岩崎さん。
「はい。最近、書きたいと思うものがたくさん増えました」
私がそう答えると、彼は「そっか。それは良かった」と言い優しく笑う。私は、彼のそんな笑顔を見ながら、ハッピーエンドが書ける日もそう遠くないかもしれないな、なんて呑気に考えていた。
「そろそろ時間みたいだから、会場に行こうか」
「あ、はい」
慌ててノートとペンをカバンにしまい立ち上がると、私は岩崎さんの後に続き廊下を歩き始めた。
岩崎さんに案内された部屋に入ると、広い部屋にテーブルが均等な間隔をあけて並んでいる。食事はビュッフェ形式のようだ。
もう既に十数人は集まっている。この中に有名な作家さんや、書店員さんがいるのかと思うと、私は少しだけ緊張した。
「ちょっと、編集長に電話かけ直すから外出るけど大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
「うん、分かった。何かあったら出口の横にいるから声かけて」
「はい」

