難あり編集者と極上に甘い結末


 ずっと掴み続けていた袖を離し、岩崎さんを睨みつけるようにして見る。だけど、彼はけろっとした顔で首を傾げた。

「え? それとこれと、一体何の関係があるの」

「こうやって、他の作家さんにも〝俺に、恋をしてみたらいい〟とか、私と同じようなことを言って、作品を伸ばしてるのかなと思って……」

 ぼそぼそ、と小さく発する。すると、彼は目を丸くして驚いた後、口を開いて笑い始めた。

「まさか、そんな所まで想像されてたとは。流石は、小説家」

 ははは、と声を上げて笑う彼。私は、少し安心したと同時に、自分が勝手に作り上げた想像に恥ずかしさも覚えた。

「あのさ、想像してくれたのに悪いけど。女性作家の担当をもったのは、君が初めてだから」

「えっ⁉︎」

「そうだよ。だから、君の想像は全部ハズレ」

 良かったね、と言って口角を上げる。私は、そんな彼に「うるさいです」と一言放つ。そして、距離をとると先を歩き始めた。

 先を歩き始めた私を追いかけるように、足音が後ろから聞こえてくる。その足音は、すぐに私の真後ろまでやって来て、気付けば岩崎さんは私の隣を歩いていた。

「杏子」

「な……何、ですか」

 突然、下の名前で呼ばれてドキッとする私。なんとかポーカーフェイスを装って返事をすると、彼は「ちょっと、こっち見て」と言って私の目の前に立った。