「だから。俺に恋しなよ、って何度も言ってる」
彼の瞳は、真っ直ぐ私を捉えた。
「本当は、自分でも気づいてるんじゃない? 君が、君自身の持つ感情に気づかないふりをして名前をつけないのなら、それは永遠に〝恋〟にはならない。〝気がつけば恋に落ちてしまっていた〟って、決まり文句のように言うけど、〝恋〟を〝恋〟だと決めるのは、自分自身だよ」
ぎゅっ、と彼の服の袖を掴んだ。
そうだ。彼の言う通りだ。私はまるで、恋愛のすべてを知っているかのように、在り来たりな恋愛論を文字として並べてきたけれど、その恋愛論は、ほんの少し間違っていた。
ああ、そろそろ認めてしまおうか。
ずっと気づいていたのに、気づかないふりをして、ずっと苦しかったこの気持ちを、そろそろ認めてあげようか。
────だけど。
「……でも、この気持ちを恋だと認めても、岩崎さんは私を好きにはならないんですよね? それなら、意味なんてない。そうしたら、私はまた、一人で恋をしてるだけ」
彼は、私の作品を良くするため。私の書籍の売り上げを上げるため、恋をしてみたら、と提案したんだ。
こんなの、好きになったって辛いだけなのに。どうして私の気持ちは、ここまできてしまったんだろう。

