難あり編集者と極上に甘い結末



「昨日は、すみませんでした。出来れば、あのことは忘れて……」

 パソコンの画面に映し出される〝昨日は、すみませんでした。出来れば、あのことは忘れて〟まで打たれた文字。

 私は、しばらくそれと睨めっこをした後、バックスペースキーで一文字ずつ文章を消した。

「昨日は、すみませんでした。今後は迷惑をかけないよう努めますので、仕事のパートナーとしてよろしくお願い致します……」

 また私は、メールの文章を口に出して読み上げる。そして、どういう文章を送るのが正解なのか分からず首を傾げた。

 書いては、消して。書いては、消して。かれこれ一時間程前から私はこの動作を繰り返していた。


「休憩」

 ため息混じりにそう呟いた私は、椅子から立ち上がるとキッチンへ向かう。コップにお茶を注ぐと、それを喉に流し込みながら昨日の出来事を思い出して顔が熱くなった。

 ああ。私はいい歳をして、なんて事をしてしまったんだ。

 後悔と、恥じらい。それから、胸の奥に残った謎めいた大きなしこり。そのしこりの正体は私には分からない。私は、あの時何故あんなにも涙が出て、あんなにも苦い思いをしたのか。それは、何度考えたって分からなかった。