「やっぱり面白いよ、君」
「何がですか。もう一度言いますけど、私は面白いことなんて言って……」
「いいのいいの。俺にとっては面白かったんだから」
何が面白かったのか納得のいかない私と、勝手に一人で話をまとめる岩崎さん。納得のいかない私は、ほんの少し口をへの字にして溜息を吐いた。
「それよりさ、最終章の修正はいつしようか」
「一応、明日なら一日空いてます。明後日からはバイト三日間入ってるので夜からなら大丈夫です」
「あー…明日は出張なんだよね。次に、沼川さんが一日休みの日にしますか。本件に関しては急ぎでもないし」
「はい。分かりました」
次の予定を淡々と立てていた私と岩崎さん。そんな私たち二人の会話に少しの違和感を覚えたのは、ふと、あの日のキスの感覚が蘇ってきたからだった。
信号が赤になり、岩崎さんがこちらを見る。突然重なる視線に、私の胸は不覚にもドクン、と大きく音を立てた。
触れて、重ねて、絡まり合う視線。視線を外したいと思うのに、そうすれば負けてしまうみたいな気がして、悔しくて、したくない。
だけど、このままだと彼の瞳に飲み込まれてしまうような気がする。彼の瞳に飲み込まれたらどうなるのか。それを考えると、私はひどく怖くなった。
「沼川さん?」

