難あり編集者と極上に甘い結末


 私も慌ててデスクの前の椅子に腰をかける。すると、彼はシャツの腕を捲り上げて早速モニターの真ん中あたりを指差した。

「はい。ここ、誤字ね。それから〝少し〟って形容詞。このページだけで三回出てるからもう少し減らしてください」

「分かりました」

 さっきまでと同じように、彼に指摘された部分を考えながら修正していく。

「この表現は違うと思う」とか「この部分、ありきたりすぎる」とか。彼は、優しい声のトーンでありながら、ど直球な指摘の仕方をする。しかし。

「ここ、良いと思うよ」

 なんて、時々褒めてくれるものだから調子が狂う。

「ありがとうございます」

 私は、ぼそっと呟くようにお礼を言うと、真っ直ぐパソコンだけを見て、後ろにいる彼に顔を見られないようにした。

 そんなことを繰り返しているうちに、日は落ちていき、気づけば外は真っ暗になっていた。


「もうこんな時間か」

「何時ですか?」

「今、八時過ぎたとこ」

「えっ」

 今日、岩崎さんは昼前から我が家に来ている。もう、気づけば私達は九時間以上も一緒にいたらしい。