「で、悩みに悩んだ結果、この作品が出来上がったと」

 ジャンルで言うとティーンズラブのような、夢であふれていて尚且つ大人要素を含むオフィスラブを書こう。

 これが、悩みに悩んだ末、私が決めた作品のイメージ。三日間、部屋にこもって作り上げたその作品を岩崎さんに読んでもらうと、彼は呆れたような表情で私を見た。

「色々考えたっていうのは、読んでて分かった。だけど、最終章、無理やりハッピーエンドっぽく仕立てた感が否めない」

 私は、肩をすぼめて視線を床に落とした。

 いつもの癖で話が暗い方向へ進みそうだったところを、何とかしてハッピーエンドな展開へ持って行ったのだけれど、やはり彼には見透かされてしまうのか。

「一読者としては、この話なら、無理やりハッピーエンドに持って行かない方がしっくりくる気がするけど」

「ですよね……」

「この作品自体は、良いと思う。好みだし、きっと、俺以外にも気に入ってくれる人が出てくると思う。そうだな……せっかく生まれたんだから、ボツにはせず、君らしい、君の納得のいく展開に仕上げようか」

 岩崎さんが、私を真っ直ぐ見てそう言う。てっきり、また沢山のダメ出しをされると思っていた私は、彼がこの作品を〝好み〟だと言ってくれたこと、それから私の納得のいく展開に仕上げようと提案してくれたことに少しだけ安堵の息を漏らした。