難あり編集者と極上に甘い結末


 彼の一言に、私は目を丸くした。

「まあ、詳しく話を聞いたわけでもないんだけど、要するに、沼川さんだけが彼を好きだったということだよね? だとすれば、それはただの片思い。ほら、よく言うでしょ。恋愛は、二人でするものだって」

 会って間もないはずの彼は、私の一番触れて欲しくない、一番深くに隠してある痛いところを突く。

 彼の言ったことは、悔しいけれどどれも的を得ていて、私はまた口を開くこともできず黙り込んだ。

「沼川さんは、まだまだ恋愛の経験値が足りないと思うな。もっと、ちゃんとした恋愛してみなよ」

「ちゃんとした恋愛……」

 彼の指す〝ちゃんとした恋愛〟というのは、何となくだけれど、私にも分かった。

 私の担当であり、恋人でもあった彼の時のように、一方通行で、始まりから終わりまで仮面を被った偽りのものではなく、また、周りの空気に流されて出来上がった、名ばかりの〝恋人〟とも違う。

 私の好きな人が、私を好きで。お互いがお互いを知りたいと思い、理解しあい、時々ぶつかり合いながら、求めあう。そういう、〝普通〟のようで私には普通でなかった〝恋〟の先にあるもの。


「これは、一読者として。それから、担当者として。君には、ハッピーエンドを書いてもらいたいと思ってる。ハッピーエンドを書かない君だからという好奇心もあるけれど、そうじゃなくて、単純に読んでみたい。今の君が書くハッピーエンドの作品を」