難あり編集者と極上に甘い結末


「そう。小説を書く上で重要なのは、読者を引き付けるストーリー構成と共感を得るための表現力。文章力や語彙力なんかももちろん重要だけど、それは小説家ならある程度持ってるものだよね。恋愛小説を主に書いている君なんかは特に、読者の共感を得るための“表現力”が重要になってくるわけど、君にはそれが足りていない」

 好きな作風だと言われ、安心していた私。そんな私に鋭い矢でも突き刺されるように放たれた厳しい言葉。優しいトーンで発せられているはずなのに、その言葉は胸に重くのしかかった。

「君の作品は、二十代から三十代の女性が主人公になっているリアルな恋愛小説が多い。全て、全く売れていないわけじゃない。だけど、爆発的に売れたわけでもない。リアルな恋愛小説を書くのであれば、ストーリー構成の幅はかなり狭まる。その中で絶対的な支持を得たいなら、読者の心を掴み、共感を得るような表現力が必要不可欠なわけだけど」

「だけど……?」

「沼川さん。……君さ、ちゃんと恋愛したことある?」

「え?」

 突然の問いに、私の思考回路は一瞬ぴたりと止まった。

「恋愛小説をいくつも書いてきた割に、どの作品も心理描写と表現力が硬いというか……どうも型にはまってる感じがして、作り物っぽい。君の作品の中に、君が経験してきた恋愛が生きてないなら、それは、誰にでも作れるただの作文だ」