(殺人鬼だのなんだのって、調子に乗りやがって__!!)
 直線に伸びる道路の、右端をあるく。
 赤いズタズタに切られているジャンパーの下から、それまたズタズタになった赤いTシャツが覗いている。黒くて光を浴びると輝る、ジーンズを履いているが、それだけは無事なようで、ズタズタにはなっていなかった。一歩一歩踏み出す度揺れる、少し乱れた赤黒い髪は、まるで返り血を浴びたようで、当人が思っているように、殺人鬼というのに近かった。右手には黒、左手には赤一色の手袋を付けており、靴でさえも、白と黒と赤で統一されていた。その姿はサイコパスのようで、よほど赤黒い血が好きなのかと思えた。
 道端に転がっていた、珈琲の少し残ったアルミ缶を、コンクリートでできた灰色の壁目掛けて、右足で蹴る。カンカンと珈琲を撒き散らしながら、アルミ缶は壁にぶつかると、そこから落ちて3mほど前方に転がっていった。それを確認すると、早歩きでアルミ缶へと向かい、左足で潰した。グシャッという情けない音がなり、足をどけると、その道路には、アルミ缶だったものがへばり付くように落ちていた。それを右手の親指と人差し指で摘むと、ちょうど右隣りにあった空き缶専用のごみ箱へと軽めに投げた。プラスチックの口とぶつかって、がこッという変な音がしたが、いちいちそんな軽いことは気にしていないし、したくもなかった。
 空は、紅く染まり、夕日が和み惜しそうな柔らかな光を発して山に沈んでいく所だった。