「なんであんたがここにいんのよ・・・」










「それはこっちのセリフだ」









蕪木廉はいかにも不機嫌そうな顔であたしを見る










どうして蕪木廉があたしの部屋にいるの?









それにここは城乃内財閥の家










蕪木廉がいるはずがない













「茜ちゃ〜ん」












ロビーから夏子さんの声が響き渡り









階段を登ってくる音がした









「あら、廉

なんであんたそんなとこにいんのよ」









廊下を歩きながら夏子さんがあたしの部屋に近づいてくる









夏子さんは蕪木廉を遮りあたしの部屋に入ってきた









「おいお袋」










夏子さんは蕪木廉などお構い無しにベットに座りあたしの顔を見る







「茜ちゃんごめんね〜

うちのバカ息子が起こしちゃって

夕食は7時からだからまだゆっくりしてていいのよ」











「息子!?」












夏子さんの息子って・・・









城乃内財閥の次男て・・・











蕪木廉だったの!?










「おいババァ無視してんじゃねーよ」










蕪木廉はさらに不機嫌そーな顔で夏子さんをみる










「お母さんに向かってその呼び方はやめなさいって何度言ったらわかんのよ!」










夏子さんは蕪木廉の顔をみもしないで怒鳴る










夏子さんにも母親らしい1面てあるんだ









「そんなことより・・・



なんでこのえのき頭が俺の家にいんの?」










「は?えのき頭?」






あたしは思わず聞いた







えのき頭ってあたしのこと!?










確かにショートヘアだし、きのこ頭なんてよく言われるけど



えのきなんて・・・










「それって茜ちゃんのこと?」










「あぁ」










「あなたたち友達だったの?」










夏子さんは不思議そうな顔であたしと蕪木廉を交互に見る










「まぁな」










蕪木廉は何かを見つめながら言う










「友達なんかじゃありません」










あたしはとっさに否定する










「まぁいいわ





廉、紹介するわね





この子は河瀬茜ちゃん





お母さんの友達の娘さんで





今日から預かることになったのよ」










「は?聞いてねーし


てかここ俺の部屋だろ?」







蕪木廉は少し怒ってる








「前に言ったはずよ

女の子預かるって

あなたが聞いてなかっただけでしょ?」












ここって蕪木廉の部屋だったんだ












「俺の部屋はどうした」











「あんた部屋は隣に移ったわ」












「なんでお袋はいっつも大事なことちゃんと言わねーんだよ




俺の家に他人の女が住んでるなんて誰かに知られたらヤバイことになるくらいわかってんだろ」











「大丈夫よ〜茜ちゃんすっごくいい子だもん!


ね、

茜ちゃんこの子の仕事知ってるわよね?」











「はい、一応」










「じゃあ、分かるわよね」










「もちろんです。誰にもこのことは言うつもりありません。」









「ありがとう〜


ほら、茜ちゃんいい子でしょ?」










「あのなぁ〜」










「ていうことだからこれから仲良くしてあげて」










そして夏子さんはあたしの肩に手を置いて真っ直ぐにあたしの顔をみた










「茜ちゃん



うちのバカ息子、口は悪いし、不良みたいにみえるかもしれないけど、本当は優しくていい子だから仲良くしてあげてね」










本当は今すぐ出て行きたかったけど






出て行ったところで行く場所もないし







なにより夏子さんに申し訳なくて








「は、はい」








と頷いてしまった










「ありがとう!



じゃ、そういうことだから廉」










「そういうことってどういうことだよ!」








いつの間にか蕪木廉は腕を組んでドアにもたれかかっていた










無駄にスタイルがいい










「夕食は7時からだからそれまでに食堂に来てね」










そう言って夏子さんは軽い足取りで部屋を出ていった