「ねぇ・・・この席って関係者席?」
「は?なわけないじゃん何言ってんの?」
「だってどう考えてもこの席はステージに近すぎる」
ゲートに入り由美が連れてきたのはステージから3列目の神席だった
通路も近く手を伸ばせば届きそう
「へへーん 結構いい席当てちゃったんだよねー」
由美が強運なの忘れてた
この子は昔からなにかと運がいい
「ところでさ」
「ん?」
「これって誰のコンサート?」
「え?今更?」
「いや教えられてないし」
「教えたわよ
『Emperor』のコンサートだよ」
「え・・・」
「「キャー!!!!!!」」
ちょうどいいタイミングでライトが落ち
会場は暗闇と黄色い声で包まれた
完璧に出るタイミングを失った
由美や他のファンたちが立ち上がる中
私は座ることさえ苦痛だった
「河瀬、何やってんのよ
立ちなさいよー」
「いい。」
「あ、そう」
由美はうちの顔を伺っていないことと思うようにしたようだ
派手な曲とともにステージに現れた9人の男達
『Emperor』という文字がモニターに大きく映った
「盛り上がっていくぜー!」
「「キャー!!!!!!」」
あたしは呆れていた
蕪木廉のせいで人生を追い込まれ夢を失った友達がいるのに
あたしはそいつのコンサートに来てる
寝ようとも思ったけど大きな音が鳴り響く中で寝れないし
帰ろうにも由美がいるから帰れない
モニターに蕪木廉の笑顔が映る度吐き気がした
ホストなのかヤンキーなのかアイドルらしくない見た目と曲でちょいワルのイメージを作っている
確かに彼らはかっこいい
だけど、彼らに泣かされた女の子たちはきっと奈那だけじゃくて
みんなが知らないだけで
数え切れないくらいいるのかな
そう考えると『Emperor』があたしの目には汚くみえた
それと同時にあたしの目から涙が溢れた
