「びっくりした…」
ゆっくり目を開けた。
なんだったのだろう、とふと風の吹いてきた方角を見る。
そこは私の大好きな柚の木を埋めた庭で、
その木の下に、一人の男の子がいた。
月明かりに照らされてはいるものの、少し遠くてよく見えなかった。
「誰…?」
背格好は大人よりも小さくて、少年のようだ。
私の小さな声に気付いたのか、彼は私に目を向けた。
目が、あった。
「柚季姫…?」
かけられた声は、少し高めだけどきれいな声だった。
突然名前を呼ばれ、驚く。
「え、あの、そうです…けど…」
挙動不審に思われてしまっただろうか。
それを聞くと、彼はゆっくりと近づいてきた。
近づいてきてわかった。
彼はとってもきれいな顔をしていた。
年齢は同じくらいの、顔の整った少年。
真っ黒な髪に、真っ黒な瞳。
真っ直ぐに私を見つめた。
私の心が、少し跳ねた。
「女の子がこんな時間まで出歩いていたらだめですよ」
「えっと、ごめんなさい…」
それしか言える言葉が出なくて、私はうつむいてしまった。
なんだか顔が熱い。
彼の瞳を見て、びっくりしてしまったのだろうか。
顔を抑えながら、私は熱が冷めるのを待った。
彼は小さく笑って、草履を脱ぎ上がった。
「それでは姫様。おやすみなさい」
「お、おやすみなさい…」
私の来た方向にスタスタと歩いていく。
彼の背中が見えなくなるまで、私は目を離せなかった。
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