「頼はここまで、何で来てるの⁇」

「自転車。」

荷物をまとめながら、一目も俺の方に向けずに言った。

頼、ってクールなんだね。

「そっか、俺もチャリなんだ。
だから、一緒にチャリ取りに行こう⁇」

頼は頷いた。

なんとなく、喋れる人ができたから それだけで今日は来た甲斐あったかも。笑

次の通常授業の日、頼に話しかけたら 俺のこと 覚えててくれたみたいで 話してくれた。

でも、やっぱり人が多いから 話しづらい。

日曜日の補習授業。
10分前に来たけど、既に 頼は席についてた。

「隣いい⁇」

「どうぞ。」

"ありがと" そう言いながら、席に着いた。

「ねぇ、頼って好きなものとかないの⁇」

「好きなもの、アバウトだな。」

"あはは、そうかもー" なんて笑いながら。

「音楽、とか。好きだけど。」

音楽、と聞いて "あの人" のことを思い出す。

"あの人" 音楽してたなー。
そもそも、家族の仲が悪くなったのは "あの人" の音楽が原因だしね。

昔はよく "あの人" に楽器 教えてもらってたなー……、懐かしい。
今でも、時々 触ったりするけれど お母さんがいる時には絶対に触れない。

だから 買い物とかでお母さんが居ない間にこっそり、楽器をしたりしてる。

コソコソするのも、少し無理があるようにも思うんだけど。
バレたら 何を言われるか分からないから。