仕事前の楽屋。
静まり返った楽屋。

……僕等 2人にしては珍しい。

鳴っている音と言えば、さっきから僕が見ている動画の音くらい。

「それ、SKASH⁇」

台本から目を離した僕の仕事のパートナー。

「そうそうー、よく気づいたね。」

「最近、蓮がそればっかり聴いてるから 流石に分かる。」

そんなに聴いてるかな⁇
1日2〜3回くらいじゃないかな、聴いてたとしても。

「それ聴く前に、新曲のデモ聞けよ。」

あー、そういえば 今度 新曲出すんだったっけ⁇
確か、頼の主演映画の主題歌とかで。

「うん……忘れてた、今度 また言ってよ。」

「忘れんなよ、本職のことを。」

「流石、頭 良い人は会話の中に倒置法を使うんだね。」

「……蓮⁇」

あ、怒らせちゃったかも。

「ごめんごめん……でさ、澪緒 このグループに馴染めてないよね。

本人は頑張って、皆と肩を並べようとしてるみたいだけど……澪緒だけが頭が出ちゃってる。」

「な、あの頑固がギターとかベースを譲って ボードしてるしな。」

そうそう、僕等 3人でバンドしてた時は僕がボードで 澪緒はギターだったのに。

「まぁ、澪緒なりに大切にしているんだろうね。」

「あぁ、そのことは伝わってくるな。」

自分の想いを言葉にして伝えることが苦手な澪緒なりに、頑張っていることが痛いほど伝わってくる。

「ねぇ、頼⁇」

相方の彼は首を傾げた。

「あの頃……僕等がもっと大人だったなら……今でも3人で楽しくできていたのかな⁇」