毛布をたたんで、自分が着ていた服を見下ろした。
水色のキャミソールだった。
今は、夏なのだろうか?
その割に、厚い毛布がかけられていたんだなあ。
何となく、自分の素肌を嗅いでみる。
本当に、何となく気になって。
仄かな、潮の香りがした。
海の潮の。
爽やかにその場に駆け抜けた香りが
何故かふいに、愛しくなった。
……なつか、しい。
「え……!」
理由もないのにただ流れ落ちる涙が
この懐かしさの正体を益々分からなくする。
何でだろう?
無くした記憶は、海のある場所なのだろうか。
そこに、住んでいたとか。
「運ぶの手伝ってもらえる?」
顔をのぞかせたお婆さんは、
お爺さんとここに住んでるに違いない。
その声に驚いて、流れてきた涙を
ごしごしと拭った。
「はい」
ご飯の手伝いくらいしなきゃ。
キッチンに向かって歩くときに、
もう一人の影が、キッチンに向かっていた。
なんで、涙が出てきたんだろ……


