頭をがーんと殴られた様な錯覚。

さっきまでは、優しく元気に、あたしに話しかけてくれたべにが。


いまではここまで悠然と、

あたしを見下ろして佇んでいる。


...あたしだって、舞美ちゃんたちのことがあるし、サイコパス役が好きなわけではない。


でも、殺されることを望んでいるわけではない。


なのになんで...?


なんでべには、そんなあたしの言い分を聞いてくれないの?


あたしのなき姿を、ただ冷徹に見下ろしているの?


「あのさぁ......ぐずっ」


あたしはしゃくり上げながら、べにに問いかけた。

勿論、俯いたままだ。


顔をあげて、べにと目を合わせる勇気などなかった。


「何?」

「人って...脆いんだね」

あたしはそういうとすっくと立ち上がり、

腕で涙を拭いて駆け出した。