そして店員に言ってやろうかと思ったその時、
俺の中の記憶が動き出した・・・・・



それはとあるデパートで買い物をしていたときである。
お菓子を物色していると突然すごい声がした。

「だしなさい!だしなさい!」

「バシバシ!バシバシ!」

この擬音ではあの映像は伝わらないだろう。
あの地獄のような光景を。

店員がある少年の体を蹴っている。
足を振り上げ蹴る、蹴る、蹴る。

だしなさいの一声とともに何発もけりをいれる。
サッカーボールキックとゆうのも初めてみた瞬間だった。

鬼畜のごとき顔で少年を蹴る店員。

北朝鮮の店で万引きしないとこれくらい蹴られることはないだろうと思わせるほど少年を蹴っていた。

泣きながら「ごめんなさい、ごえんなさい・・・・」
と謝る少年。

しかしこんなことで止まる店員ではない。
さらに蹴りをいれる。

そして警備員が呼ばれ二人が引き裂かれ、少年は事務室に連れて行かれた。

店員も行った様子だ。

ざわつく店内。

それはそうだろう。
あんな光景、初めて見たのは俺だけじゃあるまい。

完全なるキチガイ。
あんな女店員がいるなんて。

あいつは何を考えて生きてきたのであろう。
たかが万引きであそこまでやるとは。
万引きは犯罪ですなんて標語を超越している。

奴のほうが犯罪である。

おそらく俺でも裁判に勝つ自信がある。
よく考えれば少年がボコボコにされていたのは店内ではないか。

つまりまだ少年は犯罪をしていない。
あの女にはちゃんと執行猶予期間に反省してもらいたいものだ。



そんな思い出もあり少し本屋の店員に万引きを告げるのをためらった。

とりあえず自分の目当ての本を探しそれからにしようと思ったのだ。

少年が出て行ってからでもいい。
あんな無残な光景はもう見たくない。

そして俺が目当ての本を探しているとある視線を感じた。

それは店員の視線だった。