バス内。満席。中央の棒につかまり立つ俺。
俺の左右に二人の高校生。
二人とも一人用椅子に座っている。
一人はヘッドホンで音楽を聞いている今時の若者。
もう一人はゲーム雑誌をみているオタクっぽい若者。

前から5歳と2歳ぐらいの女の子供をつれた若いお母さんが入ってきた。
小さい子供である。
しんどそうなお母さんだった。
それを見る二人の高校生。

すると一人の高校生が立った。
「どうぞ」
お母さんは言う。
「え?あ・・・・」
高校生は言う
「どうぞどうぞ」
お母さんは言う。
「すいません。」

子供を座らせるお母さん。
子供が言う。
「お兄ちゃん、ありがとう」
ほほえむ高校生。








その光景をながめるオタク・・・・・・・・・・・・



いろんな高校生がいる。
今時のかんじなのもいれば普通の感じ、真面目な感じ、おたくな感じ。
でも性格が一番わるそうなのはちゃらちゃらしてそうな今時の感じの高校生だ。
しかし今、その考えはくつがえされた。
オタクはだめだ。
自分のことしか考えていない。

オタクはゲーム雑誌を再び読み始めた。
何もかんじていないようだ。
俺がたったほうがよかったなんて考えてもいない顔だ。
ぱらぱらめくりながらみている。
一瞬美少女ゲームのページで手が止まる。
横目で人がいるかどうか確認した。
雑誌をしまった。

オタクはニンテンドーDSをとりだしゲームをやり始めた。
太った体に似合わぬ指使い。
指の形が少しおかしい。
たぶん、やりすぎでゲームのコントローラーに合った形状になったのだろう。
人間はよくできてる。
オタクのゲームにあった指にまでしてくれるのだ。

神よ・・・・そこまでしてくれなくてよい

子供がおりるバス停に着いた。
子供が言う。
「お兄ちゃんありがとう」
お母さんが言う。
「ありがとうございました」
若者は微笑んだ。

さわやかな若者はヘッドホンをとって軽く頭をさげた。

横でオタクはバスカードの準備をしていた。