狼陛下と仮初めの王妃



「では、コレットさま。おやすみなさいませ」


就寝の準備を整え終えたリンダが部屋を辞していく。

途端にしんと静まった部屋の中を改めて見回し、コレットは落ち着かない気持ちになった。


「……これが、王妃仕様なのね」


今まであった調度品に加え、新たに入ったのはソファとテーブルのセットと、ひじ掛け付の椅子に、しなやかな猫脚の丸いテーブル。

それに書棚がひとつと暖炉がある。

クローゼットがどこにもないが、書棚の横にある白い扉の向こうが衣裳部屋となっており、そちらに入れ込んであるらしい。

(仮)婚約者の部屋は色合いがシンプルだったが、王妃の部屋は壁紙は桃色の小花模様で可愛らしく、暖炉の前飾りには赤い花が描かれたタイルの意匠が施されている。

カーテンも壁紙に合わせた桃色の花模様になっており、全てのテーブルの上にはこぼれんばかりの花が飾られていた。

そして、極めつけは、ベッドだ。

パッと見は前と同じで何も変化がないように思えるが、透けるカーテンの中が違っている。


「これは、どう見ても、ふたり分の寝具よね?」


白いシーツに毛足の長いふわふわ毛布はそのままだが、クッションの数と色が違っている。

薄水色と薄桃色のクッションが三個ずつ、右と左に分けて整然と置かれていた。