狼陛下と仮初めの王妃



どんな想像をしているのか、リンダは「身分差の愛が実るなんて、素敵ですわ~」と、染めた頬を両手で覆って夢見るような表情をする。

確かに、子爵が元王妃さまをお迎えするのは、身分的には難しいことだ。

コレットも乏しいなりに想像してみれば、跪いて求婚する麗しい殿方の姿が浮かぶ。

そう、今日の婚儀で陛下が見せた誓いのキスのような。

愛の言葉を並べて手を握り、何度も……と、たいそうロマンチックである。

コレットも胸がときめいてしまうのだった。

殿方に心から愛されるというのは女性誰もが憧れることで、それが思う相手ならば尚更に幸福だ。


リンダは、伯爵家の嫡男であるアーシュレイに恋をしている。

彼はのちに当主となる身で、相応の家柄であるご令嬢を嫁に迎えるのだろう。

侍女の彼女にとっては、到底手の届かない人なのだ。

だから身分違いの恋に憧れているのかもしれない。

そう思うと、コレットの胸がちくんと痛んだ。

身分違いという言葉に、何故か共感してしまう自分に気づく。

それは、今の関係全てが、偽装の上に成り立っているからかもしれない。

お沙汰とはいえ、皆を騙していることへの罪悪感もある。

コレットはせめてもの償いにと、リンダの恋を応援しようと決めた。